咳が続く・長引く咳の原因
咳の持続期間が3週間以内の咳は「急性咳嗽」、3~8週で「遷延性咳嗽」、8週以上継続する咳を「慢性咳嗽」といいます。
急性・遷延性咳嗽の場合はウイルス感染などによるかぜ症候群や急性上気道炎といった感染症に関連した咳嗽が多い傾向にあります。慢性咳嗽になってくると、感染症に原因とする可能性は減少する傾向にあります。
重篤なご病気や緊急性の高いご病気による咳
肺がん
肺に発生したがんは大きく分けて2種類あり、「原発性肺がん」と、他の臓器から肺に転移した「転移性肺がん」に分かれます。一般に「肺がん」は、原発性肺がんをいいます。
咳、痰、倦怠感、胸痛、体重減少といった症状を認めることがありますが、他の呼吸器のご病気にも見られます。無症状の場合も多いため、発見されたときには進行しているケースもあります。
当院では、胸部CT検査による肺がんの早期発見に努めています。
心不全
心筋梗塞・狭心症・高血圧・弁膜症・心筋症・不整脈・先天性心疾患などの心臓の負担を原因として、ポンプ機能が正常に働かない状態です。
心臓から十分な血液が全身に送られないことで、酸素・栄養が不足します。息切れ、咳、疲労感、尿量の減少、足のむくみ、急な体重増加などの症状が見られることがあります。
肺血栓塞栓症
肺の血管に血栓とよばれる血のかたまりがつまり、突然の呼吸困難、咳、胸痛、などの症状を認める病気です。長時間飛行機に乗った際に起こることもあり、「エコノミークラス症候群」「ロング・フライト血栓症」という言葉で知られています。
細菌性肺炎(重症)
一般細菌が気管支や肺に付着して起こる肺炎です。
咳、痰、発熱などの症状が見られます。その他、倦怠感、食欲不振、頻脈、胸痛などの症状を伴うこともあります。
喘息発作
喘息の方は、健康な方と比べると気管支が敏感になっています。ダニ、ほこり、タバコの煙、ペットの毛やフケ、エアコンの冷気、ストレスなどを原因として、わずかな刺激によって発作を起こします。
発作を起こすと、咳、痰、息苦しさ、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)、のどの痛みなどの症状がみられます。またこれらの発作が、夜間・早朝に比較的起こりやすいという特徴があります。
気道異物
誤って異物が気道に入ってしまったことを指します。呼吸ができなくなり、窒息に至ることもあります。突然の咳き込み、むせ、喘鳴、声がでないといった症状をきたします。
原因となる異物としては、さまざまなものがあり、おもちゃの部品、ピーナッツ、豆類、魚の骨、ボールペンのキャップ、乳歯、入れ歯、詰め物などが挙げられます。
咳が続く・長引く咳の考えられる疾患
感染後咳嗽(かんせんごがいそう)
風邪や気道感染によって、咳をする神経が過敏になっているために生じるご病気です。咳が、風邪や気道感染後より3週間以上続くことがありますが、一般的にはその後自然に治まります。その他の症状としては、鼻水、くしゃみを併発することもあります。感染後咳嗽は、自然軽快しますが、他の病気がかくれてないかを確認する必要があります。
肺結核
結核菌の肺への感染によって起こる病気です。
咳、痰、血痰、倦怠感、発熱、体重減少、寝汗などの症状を伴うことがあります。咳をしたときの空間に結核菌がただよい、その空間で呼吸することで周りの人が感染してしまうこともあります。
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ・ニューモニエという病原体によって起こる肺炎です。
数日間持続する発熱、全身倦怠感、咳などの症状を伴います。また、発熱や倦怠感が軽快してからも咳が長く持続することがあります。
百日咳
百日咳菌(Bordetella pertussis)によって引き起こされる病気です。百日咳菌は感染力が強く、咳、くしゃみなどにより飛沫感染を起こします。
症状としては、風邪症状と同様ですが、徐々に咳症状が悪化し、咳が刺激となって嘔吐してしますことがあります。
クラミジア肺炎
クラミジア肺炎とは、細菌の一種であるクラミジアに感染することによる肺炎です。咳が長引くことが多く、のどの痛み、鼻汁、声のかすれ、呼吸困難などの症状が出ることもあります。高齢者や基礎疾患を持つ場合には、重症化することがあります。
気管支喘息
気管支喘息は主にアレルギーによって気道と呼ばれる口から肺までの空気の通り道が狭くなる病気です。気道は刺激を受けるとさらに狭くなります。これを発作といい、咳の他、痰、喘鳴、息苦しさ、呼吸困難などの症状が見られます。
喫煙による咳
長期間の喫煙は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因になります。また、肺がんなどのがんのリスクも高まります。
喫煙をされている方は、まずは禁煙をがんばりましょう。喫煙歴のある方は肺がんのリスクがタバコを吸わない方より上昇していることがあり、定期的に肺がん検診を受けることをおすすめいたします。当院では、胸部CT検査による肺がんの早期発見に努めています。
胃食道逆流症
主に胃の中の酸が食道へ逆流することにより、胸やけや酸っぱい液体が上がってくる感じなどの不快な自覚症状を感じたり、食道の粘膜がただれたり(食道炎)する病気です。
咳症状の原因となっていることも指摘されています。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
長期にわたる喫煙(受動喫煙を含む)、遺伝などを原因として起こる病気です。中高年以上で発症することが多くなります。肺炎や肺がんといった重い病気のリスク要因です。
咳の他、痰、息切れなどの症状を認めることがあります。
アトピー咳嗽(がいそう)
アトピー咳嗽とは、気管支中枢に生じたアレルギー性炎症によって引き起こされる咳のことをいいます。のどのイガイガ感を伴い、中年以降の女性に比較的認められます。
咳喘息
咳喘息とは、8週間以上にわたり続く慢性の咳と定義され、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸)や呼吸困難を伴わないとされています。
タバコの煙や飲酒、会話などによる刺激がきっかけとなることが多く、また夜間に症状が強まる傾向にあります。
間質性肺炎
肺胞を取り囲んで支えている「間質」という組織に炎症が起こる病気です。
咳、呼吸困難といった症状を伴います。特に、労作時にひどい息切れ、低酸素血症をきたすケースが見られます。
非結核性抗酸菌症
非結核性抗酸菌(結核菌ではない抗酸菌)が肺に感染して起こる病気です。非結核性抗酸菌は、水、土といった身の回りの環境の中に存在し、感染すると考えられています。
症状としては咳、痰、血痰、倦怠感、発熱、体重減少などが挙げられますが、全く症状がないケースやほとんど進行がみられないケースも少なくありません。
後鼻漏症候群
鼻水がのどへと落ちていくことを「後鼻漏」と言います。
後鼻漏症候群とは、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎に伴い、後鼻漏が生じることで引き起こされる、のどの痛み、咳、痰がからむような違和感の総称を指します。
気管支拡張症
繰り返す感染、先天的な要因などによって、気管支が広がる病気です。
咳、痰、血痰などの症状が見られます。進行すると、肺炎を起こすこともあります。
慢性誤嚥
食べ物、唾液などが誤って気管内に入ってしまうことを「誤嚥」と言います。
誤嚥性肺炎は、誤嚥により起こる病気です。咳、痰、息苦しさなどの症状を伴います。特に、嚥下の機能が低下しているご高齢の方に起こりやすい傾向があります。
副鼻腔炎
頬、両目の間、額の下にある骨に囲まれた空洞のことを副鼻腔と呼び、副鼻腔炎はそこで炎症が起こる病気です。一般には「蓄膿症」という呼び名で知られています。
鼻水・鼻づまり、咳、額の痛み、頭の重い感じ、発熱、倦怠感などの症状を伴います。
心因性咳嗽
呼吸(咳)と心理状態は関連性が高く、心因性咳嗽は、「心理生理的メカニズムにより、発作的または連続的に起こる乾性咳嗽」あるいは「長期間続く乾性咳嗽で器質的所見が認められず、心理社会的条件によって症状に消長がみられるもの」と定義されています。発作的または連続的に発生し、器質的な異常は認められません。
お子様に多く見られますが、ストレス社会である現代では、大人にも起こり得る疾患です。
咳が続く・長引く咳の治療・検査
咳が続く・長引く場合、その原因疾患に応じた治療が必要となります。
そのための検査には、以下のようなものがあります。
胸部レントゲン検査
主に、肺炎、肺がん、肺結核、非結核性抗酸菌感染症、間質性肺炎、心不全といったご病気をみつけだすことに有用です。
胸部CT検査
肺炎や肺がん、肺結核、非結核性抗酸菌感染症、間質性肺炎、心不全、肺気腫、気道異物、気管支拡張症症など、さまざまなご病気の鑑別診断が可能です。
呼吸機能検査
呼気に含まれる一酸化窒素を測定する検査です。
気管支の炎症の程度の把握などができます。
呼気一酸化窒素(NO)検査
肺の換気機能の状態を調べる検査です。
呼吸により肺から出入りする空気の量を測って、肺の容積や気道が狭くなっていないかなど呼吸の能力をチェックし、拘束性肺機能障害、閉塞性肺機能障害(COPDなど)などについて調べます。